シアター&プロダクション
シアター&プロダクションページへ戻る

『リア王』演出のアプローチ

『リア王』は四大悲劇の最高峰といわれ、シェイクスピアの詩的表現の中でも最も優れたものを含むのみでなく、人間のおかれた極限状態をつぶさに検証している。プライド、嫉妬、裏切られた愛、狂気、拷問、殺人などが緻密にスピード感をもって織りなされている。

にもかかわらず、芝居としては成功した例が多くはない。多分その理由はこの作品の内容の濃さとテーマの複雑さ故に、演出が懸命に近代的要素を打ち出そうとしたり、何らかの哲学的な解釈を試みようとしたりするからかもしれない。

ITCLは多くの賞に輝いた『ハムレット』と同じアプローチをとる。エリザベス朝にそうであった様に、主題に焦点をおき、ストーリーの輪郭を明せきにする。演出と脚本の無駄を一切はぶき、シェイクスピア自身が考えた作品の本質に迫っていく。

これはストーンヘンジ時代に演じられたであろう『リア王』である。認識された神が存在しない時代の殆ど野獣に近い人間性が描写されている。この作品は脆い人間性に浴びせかけられた底なしの超自然の力を我々に対峙させる。“Physical Theater”が紡いでいく、ダンスの動きに近いパワフルな身体表現は観る者を覚醒せずにはおかない。それは“自然”に秘められているエネルギーが形となって観る者に迫ってくるからだ。また俳優によるヴァイオリンとチェロの生演奏が特別に作曲されたオリジナルな音楽で何層もの魅力を添えている。

『リア王』という最も詩的なドラマの演出にあたり、詩的で象徴的な演出こそが観るものの想像力をかきたて、この偉大な作品を現代にふさわしい見地から解釈できると信じる。世界中の観客に声をあげて言いたい。この作品は天才シェイクスピが生んだ最も偉大な作品というだけでなく、観る者に“悪とは何か”について問いかけ、考えさせずにはおかない、と。

このカンパニーはシェイクスピアの主な作品のオリジナルな演出で世界的に注目するところとなった。『マクベス』『夏の夜の夢』『ハムレット』『ロミオとジュリエット』など英国、米国、日本、ドイツ、スカンジナビアなど20以上の国々で上演された。シンガポールからベルリン、またマルタからドバイなどでの主要劇場で定期上演され、ウインザー・キャスル、プラハ・キャスル、ハイデルベルグ・キャスルなどでも多くを魅了した。全てのプロダクションはポール・ステビングズ(TNT とITCLの創立者)監督の演出によるものである。日本では1992年の初来日以来、本年は13年目の継続公演となる。

<前のページへ>

シアター&プロダクションページへ戻る