『カンタヴィルの幽霊』
オスカー・ワイルド原作
ポール・ステッビンングズ脚色/演出
あらすじ詳細
キャスト:
カンタヴィル公爵
サイモン卿、カンタヴィルの幽霊
ヴァージニア・オティス
ワシントン・オティス
ママ・オティス
烏たち
シーン 1
嵐の夜。 カンタヴィル公爵が城の扉をたたいている、この世のものとも思われない、不気味な
笑い声が轟く。その力が働いたかの様に公爵は地面に叩きつけられる。
シーン 2
昼間。公爵は城に近い泥だらけの地面に顔をうつむけにして倒れている。
アメリカのオティス家の連中が車でやってくる。未亡人のママ・オティスと子供たちで、ヴァージニアという少女と弟ワシントンだ。「歴史」にあふれた英国に着き興奮している。ロンドンの観光名所を歌う。やっと目的地の城をみて小躍りする家族は泥の中に倒れている公爵を発見する。彼は騒がしいオティス家の連中をモンスターか悪魔だと思い、悪夢にうなされていたところだったが、オティス家の連中が目覚めさせてくれる。
アメリカで酒場のダンサーだったママ・オティスは自己紹介をしてから、城を買うつもりでやってきたと、公爵に告げる。ママが最高のオファーを申し出たとき、実はその城には幽霊がとり憑いていて、呻き声や稲妻で脅かすので未だ買い手さえつかないと公爵はぼやく。オティス家の連中にとってこんなことは何でもない、“カンザスの竜巻”の方が凄いのだから!幽霊なんて信じてようともしない。公爵曰く、家族の誰かが死ぬときにはいつもこの幽霊が出てくると、警告するが、「おなじみの医者みたいね」と軽くかわされる。
オティスの子供たちが面白半分に黒ガラスを射ると、公爵は震え上がって叫ぶ。“カンタヴィルの
黒ガラスを痛めつけてはいけない、黒ガラスが城から居なくなると英国全土が海の底に
沈むのだ“と叫ぶ。でも一家は全然気にもしない。ママ・オティスお手製のマフィンで夕食を囲み
城の上にアメリカ国旗を掲げた後、城を手にいれたお祝いをする。ママは若い公爵に会えてご機嫌なのだ。
夜更けにアメリカ国旗が炎上する。これは幽霊の仕業だと公爵は笑い飛ばす。同時に自分の運命を
嘆くと、城を誰にも渡すなと、烏どもが一斉に騒ぎ出す。だがそれに動ぜず、言い放つのだ。
“明日にはカンタヴィルは売り払う。カンタヴィルの黒い鳥どもは消えうせろ、そして英国は
海の底に落ちるのだ。この国が税金でわたしを滅ぼすのなら、この国それにお前たちなど
どうにでもなれ!“と。
シーン 3
オティス家の騒がしい朝食で公爵は目を醒ます。子供たちの遊びは中断される。実はヴァージニア
は英国の貴婦人の様に振る舞いたいからだ。公爵が幽霊に邪魔される前に売買手続きを終わらせようとすると、
突如、壁に大きな血痕が出てくる。ママは染み抜きで消そうとするが、血痕は城中ににじみ出てくる。
ヴァージニアは乱暴な弟にうんざりし、公爵と“ロビンフッドとメイド・マリアン”になって
遊ぼうとする。公爵はヴァージニアが子供ではなく、美しい女性だと気がつく。公爵と
二人で「かくれんぼ」をしようとするが、目に見えない幽霊が公爵を捕まえる。公爵は手を離せと
言い、もしかしたらヴァージニアと結婚し、オティス家の財産を相続、税金を払い、カンタヴィル城を
人手に渡さずにすみ、自分と幽霊だけのものにできる、と窮地からの脱出を打ち明ける。
幽霊がしなければならぬこと、それはワシントンを亡き者にすることだと、漏らす。
ママは小切手を切り、城を買ったお祝いを歌う。
シーン 4
.幽霊のサイモン卿は自分の妻、レディ・エレノアを殺したシーンを繰り返す。ヴァージニア
は幽霊に静かにするようにと頼む。次にママも介入し中断させる。子供たち幽霊を待ち伏せして襲う。
サイモン卿は激怒する。
シーン 5
公爵が聴衆の中に入り、ヴァージニアへの愛の告白をするには、どうやったらいいのか尋ねる。
シーン 6
公爵はヴァージニアの部屋に行こうとする。一方幽霊はママが目を醒まさない裡に、ワシントンを
驚かせようとする。ワシントンとヴァージニアは結託し、幽霊を驚かしてやろうと、二人して
別人の幽霊を創ったのだ。ところが公爵は幽霊の衣装を身につけたヴァージニアをサイモン卿の幽霊と
間違い、彼にヴァージニアを愛しているのだ、と告げてしまう始末。ヴァージニアは公爵を
抱擁しようとするが、公爵は幽霊のなせる単なる幻惑に過ぎないと思うだけだ。
てんやわんやの混乱の挙句、遂に公爵はすべてがゲームだったと悟り、幽霊の格好をしているのは
実はヴァージニアだったと分かる。ここで二人は互いの家族の征服と勝利の歌を歌いながら
愛の芽生えを伝える。公爵は紳士としてママにヴァージニアとの結婚の許しをもらわなければ、と
告げる。
シーン 7
ママは公爵を待ち伏せしている、というのは彼がサイモン卿だと思っているからだ。ひとたび
この間違いが解けると、公爵は結婚を許してくれる様にママに願う。ママは自分との結婚の
願いと勘違いする。実はヴァージニアを求めているのだと告げるやいなや、ママはピストル
を突き出し、公爵にむけるのだ、おどろきあわてた公爵は一目散に走り去る。
シーン 8
ワシントンとも遊べなくなり、悲しくなったヴァージニア。突然、幽霊のサイモン卿が自殺を計るが
失敗したのを見てしまう。死にたいのだが、幽霊は決して死ねないのだ。ヴァージニアは幽霊と一緒にワシントンを待ち伏せしたことから、幽霊の信頼を得る。ヴァージニアは子供の遊びには
退屈したと感じ始めている。また幽霊のサイモン卿はこの世で幽霊としの存在する意味が
なくなったと嘆く。二人は現在にあきたらず別の世界を憧れるという共通の境地にいるのだ。
幽霊は死を、ヴァージニアは愛を切に求めている。
幽霊はカンタヴィルの呪いに呼びかけ、その呪いを解く様に訴える。ヴァージニアを囲んだ烏たちは古の巻物を渡す。それには「愛と死」についての不思議な数行が記されている。彼女は気を失う。すると幽霊は彼だけが知っている闇の世界へとヴァージニアを抱えていく。
シーン 9
.公爵が古い銅像に扮して現れ、ワシントンを襲う。ママの登場。 ヴァージニアが消えてしまったのだ。ワシントンに彼女を探しだす様にと命令する。公爵も扮装を解く。ワシントンは皆の気を惹くために嘘をつき、ヴァージニアはジプシーに連れ去られたと言い出す始末。ママと公爵は近くのジプシー
のキャンプに直行する。ワシントンは自分ででっちあげた嘘の顛末に仰天する。
シーン 10
公爵とママは聴衆の中に入り、娘をさらっていった悪者ときめつけ始める。
ヴァージニアが一人で入ってくる…もはや少女でなく「女」となっている。幽霊のサイモン卿が登場。
抱擁し会う二人を烏がとり囲む。突然2人は消え去る。夢の世界でヴァージニアは子供の弓矢で
母と弟を射る。最後には公爵も心臓を射られる(愛の矢)。烏は幽霊とヴァージニアをもう一度
とり囲む。後には骨の一塊とヴァージニアの着物のみ残されているだけだ。
突如、燦然とした光に包まれ、ヴァージニアは城からでてくる。彼女は毛布にくるまれ、宝石箱を手にし、花につつまれて、微笑している。花が城中に咲き始める。ワシントン登場。自分の嘘が人にばれないかと案じつつヴァージニアを探しにきたのだ。
シーン 11
公爵とママは聴衆の一人を誘拐しヴァージニアの居所を教えるようにと、迫る。
ワシントンが現れ、ヴァージニアの無事を告げる。ママと公爵は城で一緒になり、ヴァージニアも
加わる。
ママはヴァージニアを抱擁しようとして電流に打たれた様に飛び上がる。“かわいい子、どうしたの、すっかり変わってしまって!“と叫ぶ。 ヴァージニアは幽霊サイモン卿の骨の上に立っている公爵にプロポーズする。公爵は彼女を受け入れ、お互いに誓いの言葉を述べてから、宝石箱を開く。全員が歌う祝福の歌が響きわたる。最後にヴァージニアと公爵はお互いの愛を誓いあう。
けれど、ヴァージニアは幽霊のサイモン卿との最後のこと、その秘密は生涯誰にも言うことはないだろう。
(作成: 渡辺三千代 アシュリーアソシエイツ)