『夏の夜の夢』
シェイクスピア作
ポール・ステッビンングズ台本/演出
あらすじ詳細
登場人物
| (アテネの貴族たち) | |
| シーシアス | アテネの殿様 |
| ヒポリタ | アマゾン国の女王、シーシアスの婚約者 |
| イージア | アテネの老貴族の妻 |
| ハーミア | その娘、ライサンダーの恋人 |
| ライサンダー | ハーミアに恋する青年 |
| ディミートリアス | ライサンダーの恋敵、ハーミアに恋する青年 |
| ヘレナ | ハーミアの友人、ディミートリアスに恋している |
| (アテネの職人たち) | |
| ピータークインス | 大工 |
| ニックボトム | 機屋(はたや) |
| トムスナウト | いかけ家 |
| フルート | ふいご屋 |
| (妖精たち) | |
| オーベロン | 妖精の王 |
| タイターニア | 妖精の女王 |
| パック | またはロビン・グッドフェロウ、妖精のいたずら小僧 |
プロローグ:
アマゾン(女の戦闘者)とギリシャの男たちの闘いは不思議な妖精パックの助けでシーシアス公の勝利に終わる。女王ヒポリタは捕虜になるが、命を助けられた代わりにシーシアス公と結婚を約束させられる。
シーシアスの宮殿
婚礼が待ち遠しいシーシアス公の許にイージアの登場。娘ハーミアが親の選んだ相手ディミートリアスとの結婚を拒絶し、ライサンダーと恋仲になっていると訴える。3人の恋人たちも登場。怒る母親は「アテネの法律に従い、親の選んだ相手と結婚しなければ死刑だ」と宣言する。シーシアス公もこれに応じ、母親に従わなければ、死ぬか、尼になり一生男性と会わないかの選択を迫る。
ハーミアとライサンダーはむろん親や法律などに従わない。ハーミアの母親に気に入られているディミートリアスもこの結婚を諦めるようにと、二人を説得するが効き目はない。ライサンダーとて貴族である自分が何故恋人の母親から嫌われるのか分からない。憤懣やるせないライサンダーは、シーシアス公に訴える。ディミートリアスはヘレナという女性と婚約していたのにハーミアに勝手に恋してヘレナを捨てたのだ、と。そこで公は二人に数日よく考えるようにと告げて立ち去る。
二人だけになった恋人たち、ライサンダーとハーミアは密かにアテネから逃れ、駆け落ちのてはずを整える。そこに現れたハーミアの幼友達ヘレナにハーミアは駆け落ちのことをうっかり漏らしてしまう。ディミートリアスを愛しているヘレナはこの秘密を彼に漏らし、二人の道行きを追うディミートリアスに会えるだけで自分は満足なのだと思い詰めている。
アテネの大工クインスの家
地元の職人たちがシーシアス公とアマゾン女王の婚礼を祝い、その余興に御前で素人芝居を打つことになった。出しものは『ピラマスとシスピー』という『ロメオとジュリエット』に似た悲劇。主役のボトムは全てをとりしきろうとする。クインスが台本を書いたのでキャストを決めスナッグ、フルート、ボトムたちにリハーサルのためにアテネを離れた森でおちあうことを告げる。
アテネ近くの森
いたずら小僧の森の妖精パックは小妖精に出あう。そして、妖精の王オーベロンと女王タイターニアがかわいらしいインドの男の子のことで喧嘩をしているために自然のリズムに異変が起きて、夏の嵐や洪水が作物を台無しにしていると聞かされる。
オーベロンとタイターニアが口論しながら登場。タイターニアはインドの男の子をさらって逃げ去り、オーベロンが一人お供たちと残される。女王をこらしめようとオーベロンはキューッピッド(愛の神様)の“魔法の花”をみつけるようパックに命ずる。花の滴が眠っているまぶたにつけられると目覚めた瞬間見た相手に恋してしまうという妙薬なのだ。すぐさまパックは花を見つけに飛び去る。こうなるとタイターニアが惚れ薬の犠牲者になるのは時間の問題だ。
森の中(以下のシーンは全て森が場面)
森に入って来たのはハーミアとライサンダーの秘密の結婚を止めさせようとするディミートリアス。何とかディミートリアスの気をひけないかとヘレナもやってくる。しかしディミートリアスは相変わらず素っ気ない。二人は口論しヘレナは傷心する。ディミートリアスは眼鏡を紛失。一部始終を見ていたオーベロンはディミートリアスの冷たい仕打ちに腹をたて、若者を罰しようと決める。花を持ち帰ったパックに王はタイターニアとディミートリアスに花の滴をつけるように命ずる。こうすればディミートリアスはヘレナと恋に落ち、タイターニアもこらしめることになる寸法だ。
タイターニアの森の家
タイターニアは小妖精たちやインドの男の子と歌い踊っている。パックは眠る彼女に忍び寄り、その瞳に惚れ薬を塗る。そこに森で迷い込んだライサンダーとハーミアがやってきて横になり眠りにつく。二人は慎み深い距離を保ったままで。(ライサンダーは寄り添って眠りたがったのだが。)この慎み深い距離がパックに勘違いをおこさせ、ライサンダーをディミートリアスと混同し、ライサンダーに惚れ薬を塗ってしまう。よろめきながらヘレンがやってきてライサンダーにぶつかり、目覚めたライサンダーはヘレナに一目惚れ。驚き困惑したヘレナは逃げ去り、ライサンダーは彼女を追いかける。一人残されたハーミアが目覚めると、恋するライサンダーの姿が見えない。一体どうしたのだろう。ディミートリアスに殺されたのかしら。それとも野獣が?彼を捜しに一目さんに走り去る。
森ではクインスと素人役者たちは愛の悲劇をリハーサル中。ボトムが例によってとりしきる。これを見たパックはあまりの下手さにあきれるばかり。ピラマス役のボトムが茂みに入ったとき、すかさずパックはボトムの頭をロバに変えてしまう。気づかないのはボトムのみで、茂みから出てきたボトムを見て皆は逃げ出す始末。それはロバの頭をした怪物なのだ。
ボトムは森の中を鼻歌まじりで歩き周り妖精の女王の目を覚ます。と、女王は怪物ボトムに人目惚れ。この傑作喜劇に小躍りするパック。早速計略は思ったよりうまくいったと王に報告。妖精の女王がロバの怪物に恋してしまったのだ。タイターニアとお供の妖精たちはボトムをこの世ならぬ夢の国へと誘う。
森の中でディミートリアスはハーミアに出くわす。彼女はディミートリアスがライサンダーを殺したものと思いこんでいる。ディミートリアスはハーミアを恋し、恋敵のライサンダーを憎んでいる。ハーミアは近づくディミートリアスをはねつける。一部始終を見ていたオーベロンはパックの間違いを初めて悟る。アテネの恋人たちはそれぞれ間違った相手に惚れ薬が塗られたわけだ。
名誉回復にと急ぐパックはディミートリアスの目に惚れ薬を塗れば、目覚めてヘレナをみて、全てうまくいくのだと計算する.....案の定、計略はうまくいったが、今度はハーミアは忘れ去られて、ディミートリアスとライサンダー二人がヘレナに恋してしまう。二人から言い寄られたヘレナは自分をからかうつもりだときめつけ、誰も信じない。ハーミアが登場。ライサンダーが生きていたことに安堵するが、彼からもう愛していないと云われ、傷心する。四人は森中を追いかけあい、着物はボロボロに、気持ちもズタズタに。ハーミアは幼なじみヘレナとまたけんかを始め、二人の男は恋敵に戻る。
全てを見たオーベロンは、もともとは正義と幸福を望んだはずなのに愛の混乱をみせつけられ、パックにいがみあう恋人たちがお互いを傷つけるのを止めさせ、魔法をとくように命ずる。パックは主人の言葉をすぐさま実行。疲れ果てた恋人たちは失神しやがて魔法は消える。一方、タイターニアは森の奥深いところでロバ頭の怪物とたわむれている。しかしこの恋は彼女の目が真実を欺いているだけなので、実るはずもない。オーベロンは女王の愚かしさに憐れみをかけ、魔法から解き放す。おまけにボトムに夢中になっていた女王はもともとの争いの種であるインドの男の子のことも忘れてしまった。この憐れみの心が寛容と思いやりの繋がりを生み、オーベロンが愛に悩む世界を救うことになる。
森に狩りにやってきたのはアテネの殿様シーシアスと婚約者のヒポリタ。連れてきた狩犬は獲物を追うことより、鳴き声の勇ましいので知られている。狩犬は眠れる恋人たちにつまずく。目覚めた恋人たちは今までのことが夢かうつつか分からず呆然としている。しかし、この夢こそが彼らを変えたのだ。今やライサンダーはハーミアを、ディミートリアスはヘレナを愛している。世界は平和になり、愛の平和がその基礎になった。イージアはこの契りはアテネの法律に反すること、娘を罰することを要求するが、シーシアスはこれを退ける。法律も母親も真実の愛を破壊することはできないのだから。
ボトムも魔法がとかれ、その頭が元に戻り、よろめきながらクインスの家に戻ってくる。クインス、スナッグ、フルートはスターのボトムが消えてしまい、芝居ができなくなってしまったかと絶望していたところだった。しかし、ボトムが戻ってきて皆は安堵。シーシアス公の婚礼を祝う芝居の準備が始まる。
それは一時の座興にはなるが、まことに幼稚な芝居なのだ。愛し合っているピラマスとシスピーの家は敵同士なので壁を隔てた庭でのみ会うことができる。壁穴を通して愛をささやくことしかできない。二人は駆け落ちをきめ、あるお墓で待ち合わせる。先に着いたシスピーはライオンに噛み付かれるが、血のついたコートを残したまま、逃げおおせる。遅れてやってきたピラマスはシスピーの血のついたコートを見て、彼女がライオンに殺されたと早合点し、即座に自害。そこに現れたシスピー嬢は死んでいる恋人をみて、これまた自害。芝居は悲劇のはずだが、むろんハイ・コメディだ。また並みいるシーシアスや恋人たちには愛の危険の警告でもある。彼等だって親や法律にそむいたので死刑にされたかもしれないし、あるいは森の中で殺し合っていたかもしれない(自殺をほのめかしたことさえあったのだから)。まことに愛とは業の深いもの、理屈では分からないもの。
畢竟、芝居とは遊びなのだ。恋人たちは素人芝居に興じ、夜も更けて、それぞれは新床に向かう。次ぎはオーベロンに率いられた、妖精の出番。彼等はこの契りを祝福し、豊穣の踊りとなる。砂漠は花々で満ちあふれる。
風の様に現れたパックが観るものに告げる。これまでのことは、罪のない遊び、つかのまの夢、すべてはみな影ぼうしだった、と。「ではみなさまには、ごきげんよう、おやすみなさい。」
(作成: 渡辺三千代 アシュリーアソシエイツ)