シアター&プロダクション

『夏の夜の夢』  ポールステッビングズ脚色・演出

『夏の夜の夢』がシェイクスピアのコメディの中で最も魅力的とされているのは、”物狂い、恋人、詩人”が超自然・魔法の世界の中で、コメディとロマンスを見事に融合させているからだ。『マクベス』『ハムレット』で世界的な評価を得たポールステッビングズはそのユニークな演出スタイルをこの作品でも見事に発揮する。地理的、時代的な背景をあえて設定せずにストーリーを展開させ、愛の悦びと苦しみ、想像力の不思議さなどを暗示する。

この作品は明らかに豊穣の儀式といえるし、この儀式が放つエネルギーが芝居の 推進力をなっている。シェイクスピアは英国の伝統的な超自然観、古典のギリシャ神話の世界や妖精の存在を見事に調和させる。

シーシアスがアマゾンの女王を征服するドラマで始まった闘いは、『ピラマスとシスビー』という職人たちが演じる「ドタバタ悲劇」及び、4人の恋人同士の迷走と葛藤に繋がっていく。妖精の「森」は怖い、それ故にエキサイティングな所といえる。反してシーシアスが治めるアテネは非情でかつ不毛な所だ。ボトムはおそらくシェイクスピアが生んだ最大の道化であろう。この作品では彼は滑稽で自惚れの強い男であるのみでなく、自己を知らずに愛を知ろうとする男の典型として画かれている。

この作品が放つエネルギーは言葉からだけではない。「森」、ことに夜のそれは、現代においても徒ならぬ力で我々を惹き付ける。シェイクスピアの時代においてもその存在感、秘められたエネルギー、ことに夜の森のもつ美、神秘性、魔性、底知れぬ闇などは人を魅了し、また呪縛したのだろう。『夏の夜の夢』の影の主人公は「森」であるといえる。

『マクベス』『ハムレット』『ロミオとジュリエット』『リア王』『じゃじゃ馬馴らし』は3大陸、15の国々で上演され、各地で人を魅了し、メディアでも賞賛のコメントを受けた。監督、演出、ドラマツルギー、コレオグラファーなどの同じメンバーがシェイクスピアの最も魅力的なコメディの本質を損ねることなく、オリジナルな作品に仕立て上げた。

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