シアター&プロダクション

『じゃじゃ馬馴らし』 あらすじ
ウィリアム・シェイクスピア作
ポール・ステッビングズ 脚色・演出

主要な人物とそのスケッチ

Baptista(バプティスタ)
パデュアの裕福な名士。美しい、対称的な性格の二人の娘キャタリナとビアンカをもつ。

Petruchio(ペトルーキオ)
ヴェローナからパデュアに友人ホーテンショーに会いに来る。かつて、トルコ軍と激しい戦いをし、大量の金貨を海で失った、威張りやの“カピタン”。 “烈風”の勢いで自分の求愛街道を突っ走る。

Katharina(キャタリーナ)
バプティスタの姉娘、理不尽な相手には毒舌で「夏の終わりを告げる雷」の様にわめくので人々から「じゃじゃ馬」といわれ、婚期を逸しかけている。

Bianca(ビアンカ)
バプティスタの妹娘。美人で「乙女にふさわしいつつましい」物腰をもつ。然し、芝居が進行するにつれ、だんだん姉キャタリーナの性格に似てきて、「気違いお姉さまに気違い旦那様、似たもの夫婦ね。」と辛辣な批評をする様になる。

Lucentio(ルーセンショー)
ピザの町の大商人、名門の家系、ヴィンセンショーの息子。パデュアに学問と教養を身につけようとやってくる。「浅い水たまりを捨てて、深い淵に身を投ずる」と彼の決意、ビアンカを一目みた瞬間、「おれは恋に燃え、恋に死ぬぞ」と召使トラーニヨにうちあげる。ビアンカのラテン語の教師に変装し彼女に近づく。

Hortensio(ホーテンショー)
「命より大切な宝石」ビアンカに恋している。“じゃじゃ馬娘キャタリーナが夫をもつまでは、誰一人ビアンカに近づくことを許さぬ”との父親バプティスタの宣言を受け、友人ペトルーキオにキャタリーナとの結婚話をもちかける。また、ビアンカの音楽教師に変装し彼女に近づく。

Gremio (グレミオ)
ビアンカの求婚者の一人。ルーセンショーと張り合っている。「女を養うのは年寄りにかぎる。」と自分の富を自慢するが、ルーセンショーと富を比較され 「競り」に負ける。

Grumio (グレミオ) 
ペトルーキオの召使。

Vincentio(ヴィンセンショー)
ルーセンショーの父親,

Widow(未亡人)
ホーテンショーがビアンカをあきらめてから結婚する相手 仕立屋, その他 ペトルーキオの召使など。


序幕 スライ(文無しの酔っ払い)、狩に来た一行、パブのおかみ

文無しの酔いどれ、スライがパブの前で息巻き、気絶していると、通りかかった狩に出てきた一行から冗談を“仕掛け”られ、金持ちの邸宅に担ぎこまれ、流行の衣装をまとわされる羽目に!実は、酔いどれ男は裕福な身分の者で、ようやく今、狂気から正気へと目覚めつつあるとのこと。呆然とした夢うつつのスライは、休む様に諭され、またもや眠りに落ち、そして、夢をみる…その夢がこの『じゃじゃ馬馴らし』という芝居でした。

第一幕

ルネッサンス期の華やかなイタリーはパデュアが舞台。ピザの大商人の息子ルーセンショーはパデュアに学問と教養を身につけようとやってくるが、ビアンカという淑やかで、美しい娘の恋のとりこになる。彼女はバプティスタという裕福な名士の妹娘で、すでに二人の求婚者、老人のグレミオと若者ホーテンショ-―がいる。姉キャタリーナは美人で独立心の強い女性だが婚期を逸しかけている。理不尽な相手とみると間髪をいれず“雷”の様に喚きたてるので、人は「じゃじゃ馬」娘と呼ぶ。困った父親は姉娘が夫を見つけるまでは妹はどなたにも「さしあげられない。」と宣言。グレミオとホーテンショーは“雷娘”に夫を探す算段をしようと手を組む。また、ルーセンショーはビアンカのラテン語の教師に変装し彼女に近づこうともくろむ。

(フラッシュバック)
ペトルーキオ率いるイタリー軍に対するトルコ軍勢との壮絶な海上戦の場面。戦いはイタリー軍の圧勝に終わるが、敵トルコ軍の大量の金貨がふいに海の藻屑に……。 愕然とするペトルーキオ。(スライの夢にペトルーキオが現れる。)

「広い世間に出て幸運をつかもうと」友人のホーテンショーに会いにピザからこの町にやってきたペトルーキオは,その友人がもちかけた“雷娘”との結婚話こそ、願ったり、適ったりと、二つ返事で承諾。「その女が荒れ狂うアドリア海のように荒々しい気性でも」びくともしない。召使グレミオも旦那さまは「馬五十二頭の病気をしょいこんだカナツンボの歯なし婆だろうと」金があれば女房にすると念をおす。

第二幕

バプティスタの家で、キャタリーナは男たちが自分に夫を探そうとしているに腹を立て、妹をなじっている。

グレミオがラテン語の教師に変装したルーセンショーをつれてやってくる。ペトルーキオも音楽教師に変装したホーテンショーをつれてくる。
ペトルーキオはキャタリーナと結婚したい旨を話すと父親は驚くが、ペトルーキオの父親(ヴィンセンショー)がピザの金持ちなので、否定はしない。それぞれが、ルーセンショーとホーテンショーを娘ビアンカの勉強に差し向けるが、ホーテンショーが壊れたリュートを頭にかぶせられて、ほうほうの態で戻ってきたので、ペトルーキオはますますキャタリーナに興味を持ち始める。

そこで、父親との持参金の話しに入り、二人は誓約書のことまで話しが進む。父親は「肝心なもの」「娘の心」が大事だと訴えるが、元軍人のペトルーキオは「そんなものは無視」していいと、自分は“烈風”でなにものにもびくともしない、「お嬢さんの炎など、一吹き」と自信満々。そこに現れたキャタリーナとペトルーキオはすぐさま、互角の力で白熱した言葉の一騎打ちを始める。然し、彼は巧みな懐柔策でキャタリーナの「じゃじゃ馬ぶりは世を欺く手段にすぎない。」彼女は「暁の女神の様におだやか」、「ハシバミの枝のようにすらっとしている」とほめたたえ、”We will have rings and things and fine array;/Kiss me, Kate, we will be married on Sunday.” (指輪などいろいろ用意しなければ、それに晴れ着も/ケイト、キスしてくれ、日曜に結婚しよう。)と、烈風のおしまくりで、何もかも決めてしまう。

第三幕

ビアンカの部屋でルーセンショー(ラテン語の教師に変装)とホーテンショー(音楽の教師に変装)がそれぞれの分野で競うが、勝ち目はルーセンショーに。彼はラテン語を教えながら、巧みに愛の言葉を入れ込んでしまう。ビアンカもこれに反応し二人は恋に落ち、ホーテンショーの擬似音楽レッスンは失敗に終わる。

“烈風男”と”雷娘”の結婚式の日。バプティスタ、キャタリーナ, グレミオ、(変装した)ルーセンショーは花婿を待つが,なかなか現れない。遂に、やって来たが、その異様な、いでたちにみなは肝をつぶす。召使のグレミオが病気もちの馬の格好で現れ、それに跨るペトルーキオはボロボロの鋳掛やといった風体。キャタリーナは俺と結婚したので、「俺の衣服」としたのではない、と言い切る。結婚式では神父を罵り、あげくは殴るしまつ。また花嫁の首をつかみ、すさまじい音をたててキスし、教会中に鳴り響かせる。またペトルーキオは披露宴に出ないという。花嫁は断じて花婿について行かないと、抗議。「いいなりになっていたら、ばかにされるから」と意地をみせる。花婿は殆ど凶暴になり、「この可愛いいケートは俺が連れてゆく。」俺の「畑だ、納屋だ、馬だ、牛だ、ロバだ、俺のなんでもかでもだ。」「グレミオ、剣をぬけ。」とさけぶ。こうなると父も降参するしかなく、ビアンカさえ「気違いのお姉さまには、気違いの旦那さま、似たもの夫婦ね。」とさじを投げる。

第四幕 ペトルーキオの軍キャンプ

グレミオがカーティス(他の召使)に、いかにペトルーキオから酷い扱いを受けたかとこぼしている。キャタリーナが馬から落ちたのに助けず、召使のせいにする。自分を向かえに来ない、肉を焦がしてしまった、とあたりちらす。キャタリーナには、濃げ肉という口実で食事も与えない上、貞節について説教までし、「亭主の支配権を確立」する。寝室でも難癖をつけて一晩中眠らせない。

一方、バプティスタの家の前でグレミオと(変装した)ホーテンショーがビアンカとルーセンショーが恋仲になっているのを盗み見する。
そこで、ホーテンショーは変装をとき、グレミオと相対し、二人ともビアンカをあきらめることにし、ホーテンショーはある金持ちの未亡人と結婚することに決める。こうして恋敵が消えたので、ルーセンショーはビアンカと晴れて結婚できるわけだが、二人の父親同士が財産を調べた上で婚約を取り決める必要があるので、ルーセンショー自身が父親ヴィンセンショーに変装するという苦肉の策を講じる。

ペトルーキオの軍キャンプ。食事も与えられず、睡眠不足のキャタリーナは朦朧としているのに、ペトルーキオは仕立屋をよび、難癖をつけ、キャタリーナには似合わないガウン、帽子を注文し、里帰りを提案する。不都合な出発時間に反対するキャタリーナを叱り付けるので、聞いていた召使グレミオも「太陽にまで命令する気だ」とあきれはてる。

パデュアにて。 変装をといたルーセンショーはビアンカの父に正式に結婚を申し込み、自分はピザの裕福な家の出であることを告げると、バプティスタはヴィンセンショーという有名な名前は承知だが、父親同士の直接の交渉で持参金を決めるのが正当なやり方だと主張する。
やがて、自分の父親ヴィンセンショーその人に変装したルーセンショーが出現、多額の持参金を払う書類に署名する。

バプティスタが去るや、急いで変装をといたルーセンショーはひそかにビアンカと二人だけで聖ルカ教会に行き、結婚式をやり遂げようとすべての手はずをととのえて、その場を去る。成り行きへの一抹の不安をかかえながら…….。

パデュアに帰る途中のキャタリーナトペトルーキオ。夫が太陽を見て月だと言い張り、彼女が同意しなければお父さんの家にはいかない、という剣幕なので、「なんでもいい、とにかくあなたの言うとおりのもの」とまで同調。次に老人(実はヴィンセンショー)が現れるとペトルーキオは「美しいお嬢さん」と呼びかけ、妻が同じくそう呼びかけると、今度は老人をなぜそう呼ぶのか、となじる。老人がパデュアに息子ルーセンショーに会いにいくと聞き、奇遇に喜んだ老人とペトルーキオ一行は、そろってパデュアへと旅を続けることにする。

第五幕

ペトルーキオ、キャタリーナ、ヴィンセンショー、グレミオの一行がルーセンショーの家に到着。ビアンカとルーセンショーは結婚したばかりで二人は寝室の窓から、ヴィンセンショーとペトルーキオたちがやって来たのを見る。これは一大事と、ルーセンショーはまたもやヴィンセンショーに変装して下りてくる。ここで、本物と偽者が同じ格好で相対することになった。偽者のヴィンセンショー(ルーセンショーの変装)が自分こそ本物のヴィンセンショーだと名乗りをあげたので、今度はペトルーキオが混同し、本物のヴィンセーショーが実は偽者だったのではないか、疑う。これに乗じて、(変装した)偽者ヴィンセンショーは気の毒な本物ヴィンセンショーを偽者の悪者と責め立てる。

めくるめく混乱の渦から離れ、ペトルーキオとキャタリーナは一切のさわぎを観察する。騒ぎを聞きつけたバプティスタも現場に姿を見せ、ヴィンセンショーを監獄にいれるときめつける。ここで、ことの真相を見極めた、ペトルーキオはヴィンセンショーが偽人物でないと証明し、ルーセンショーこそ他人の名前を騙る偽者である、と断言するに至り、万事休したルーセンショーも仮装をとき、本物の父親に許しを乞う。混乱したヴィンセンショーは先ほどの仮装のルーセンショーは一体何者なのか?と疑惑をもつ。また、バプティスタもラテン語の教師が実はルーセンショーだったと分かり唖然とするが、ルーセンショーがこれはすべてビアンカへの愛がさせたことだと、許しを乞う。しかし二人が秘密で結婚してしまったことにバプティスタは不満だがヴィンセンショーがなだめる。混乱が一段落したところで、キャタリーナは「往来の真ん中で?」と躊躇いながらも、夫にキスをする。

ルーセンショーの家で3組の新婚カプルが祝宴を始める。
ビアンカとルーテンショー、キャタリーナとペトルーキオ、ホーテンショーと(結婚したばかりの)未亡人。
「やっとのことで私たちの不協和音も調子が会いました。」とルーセンショーのお祝いのスピーチが始まるが、一同は「じゃじゃ馬」というテーマを中心にあてこすりをしたり、宴会の雰囲気は楽しそうでない。キャタリーナと未亡人はお互いに皮肉を言い合って、会話もはずまない。ビアンカ、キャタリーナ、未亡人は退席する。その後でビアンカを射止められなかったホーテンショーをペトルーキオが笑いものにすると、ホーテンショーも、ペトルーキオは「じゃじゃ馬」と結婚する羽目になったと、やりかえす。夫たちは妻の従順テストを提案、呼ばれてすぐに来るのは3人の新妻のうち誰かで、賭けをする。

召使に呼ばれてもビアンカと未亡人は言い訳をして現れない。キャタリーナはすぐにやってきて、他の二人は暖炉の側にいて腰をあげないという。
ペトルーキオはこうして賭けにも勝ち、キャタリーナが他の二人を連れてくると、この二人に「妻の義務とは何かを教えてやれ」と命令する。そこで彼女は滔々と弁じるのだ。夫は妻にとって「主人であり、王様であり、支配者だ…」「やっとわかりました、私たちがふりまわす槍は/藁同然、力は弱く、弱さはくらべるものがなく、/ いくら強そうに見せかけても実は逆だってことが….」と。感極まったペトルーキオは「ああ、それでこそ女!キスしてくれ、ケート、さあ」と言い、二人の男には「賭けに負けてさんざんだったな。」と自分がケートとのパワーゲームにも、またこの賭けにも勝ったことを誇示し、皆には「いい夢を」と、言いながらキャタリーナと退場する。

フィナーレ

夢から覚めたスライはパブの側の道端に放り出されている。パブのおかみはスライをみつけ、早く家に帰らないと女房にどなられよ、と言うがスライは未だ夢心地で「女房なんて怖くもない、だってさっきの夢でガミガミ女を馴らす手をすっかり知ったんだから」とやりかえす。
とたんに、腕まくりをし、棒を手にしたスライの女房が現れ、スライを掴み、ドスの効いた声でわめく。「スライ!」

(作成: 渡辺三千代 アシュリーアソシエイツ)

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