『じゃじゃ馬馴らし』 ポール・ステッビングズのコメント
このプロダクションは芝居の副主題も検証する(それによって喜劇の本質はそこなわれるものではない。)例えばペトルーキオは兵士であることはしばしば見落とされている。シェイクスピアの時代のイタリーには華麗な文化が花開いたが、同時に暴力も横行していたのも事実なのだ。ペトルーキオは高慢なケイトを配下にしようとするのはその戦闘意識の 表われでもある。この意味でペトルーキオはカピタンと呼ばれた、コメディア・デル・アルテに出てくる典型的な威張りやの軍人なのだ。イタリーのコメディーがシェイクスピアに影響を与えたのは周知のことであるのだから、このプロダクションの輪郭造りに 典型的なコメディア・デル・アルテの手法を使うのは自然なことと考えるし、また この手法から痛快な型(かた)が生まれたわけだ。仮面や型を意識した動きが意表をつく輪郭を生む。ルネッサンスのイタリーを彷彿させるビジュアルな要素として、ピエロ・デラ・フランチェスカやボテイチェリの絵画から多くのインスピレーションを受けた。スコットランドの作曲家ジョン・ケニーの音楽が生演奏され、シェイクスピアの時代にふさわしい空気を醸し出す。ハープシコード、クラリネット、パーカッションなどが5つのパートの合唱を彩る。
TNT とAmerican Drama Group Europe※はこの6年間世界中をまわりポール・ステッビングズの演出・監督によるシェイクスピアの主な作品を演じ続けている。(『マクベス』『夏の夜の夢』『ハムレット』『ロミオとジュリエット』『リア王』など。)ロンドンからアトランタ、上海からベルリン、テヘランから東京などと世界を網羅している。公演は世界中の主な劇場のみのでなく、ヨーロッパやスカンジナビアの国々で宮殿の中庭、古城などでも
定期的に行われている。
(92年より春・秋に定期的に来日し、ヨーロッパでは年に1000回以上の公演を英国を含む20以上の国で行う。)
『じゃじゃ馬馴らし』、このミュージカル・コメデイーは劇団のシェイクスピア レパートリーを更に開花させ、男と女の闘いを扱った歴史的作品として、女性と社会、男性の描く固定観念としての女性像、結婚と金、愛の本質などと、様々な問題提起をしながら、シェイクスピアの喜劇の中で(本で読むよりは)いつの時代にも舞台で煌く人気作品として、我々を魅了しつづけるだろう。いつもながら、この詩人(シェイクスピア)は難解なテーマをさりげなく喜劇の中に織り込んでいるのだ。
※ TNT とAmerican Drama Grroup Europeがアジアで公演する時にはITCLと呼ばれる。